本日の市場テーマ
「雇用悪化で利上げ期待は後退。しかし、ホルムズ再開はまだ条件付き」
7月米雇用統計は市場予想を大きく下回り、非農業部門雇用者数は2.3万人減少。さらに5・6月分も合計10.3万人下方修正された。
この結果を受け、9月利上げ観測は後退し、米国債利回りとドルが低下。金には資金が入り、8月7日の金先物は2.3%上昇、週間では7.2%上昇した。
一方、週末にはイランがホルムズ海峡再開には米国側の追加条件履行が必要と明言。オマーンとの新航路合意は最終段階にあるものの、海峡の実質的な再開はまだ確認されていない。
つまり現在の機関マネーは、
「利上げ後退による金利低下」
と
「ホルムズ問題による原油・インフレリスク」
を同時に処理している。
① 東京市場
週末明けの東京市場で最初に確認すべき材料は、米雇用統計後の金利低下が維持されるかと、ホルムズ海峡問題による原油上昇が再び強まるかの2点。
8月7日の米雇用統計では雇用者数が2.3万人減少し、失業率は4.1%となった。ただし失業率低下は労働力人口が26.4万人減少した影響も大きく、単純な雇用改善とは評価しにくい。
週末にはイランがホルムズ海峡の再開条件を明確化。
市場では、
米雇用悪化 → 利上げ期待低下 → 金利低下 → GOLD
という資金経路が形成された一方、
ホルムズ問題 → 原油上昇 → インフレ懸念 → 金利上昇リスク
という逆方向の経路も残っている。
東京時間はこの2つの資金フローがぶつかる時間帯になる。
② 欧州市場
欧州市場で重要になるのは、ホルムズ海峡の「合意」と「実際の船舶通航」を市場がどう評価するか。
8月7日時点で、ホルムズ海峡を通過した船舶は月曜から木曜までで33隻。前週同期間の50隻から大きく減少していた。
通常は週130〜140隻程度が通過していたため、物流正常化にはまだ距離がある。
さらに週末、イランはオマーンとの航路合意が最終段階にある一方、米国による補償、制裁解除、軍事的脅威の停止、凍結資産の解放などを再開条件として提示。
そのため市場にとっては、
「外交合意が近い」≠「原油供給が正常化した」
という状態。
原油価格は週明けに上昇し、Brentは84.79ドル、WTIは79.29ドルまで上昇した。
③ NY市場
8月7日のNY市場では、米雇用統計が機関マネーの資金配分を大きく変えた。
非農業部門雇用者数は、
予想:+8.0万人
実績:−2.3万人
となり、5月・6月分も合計10.3万人下方修正。
市場では9月利上げ確率が大きく低下し、株式・債券が同時に買われ、ドルは下落。金も大きく上昇した。
S&P500は0.62%上昇して過去最高値、NASDAQは1.30%上昇。
一方、金は週間で7.2%上昇し、1週間としては1月以来最大の上昇となった。
ここで重要なのは、
GOLDだけに逃避資金が入ったわけではない
こと。
金利低下を受けて、
債券+株式+GOLD
へ同時に資金が向かった。
これは典型的な全面リスクオフではなく、金融政策期待の変化を利用した資産再配分と見る方が事実に近い。
④ ETF・GLD・COMEX
GLD・ETF
現時点で確認できるWGCの最新公開データでは、6月末時点の世界の金ETF保有量は4,047トン。
上半期全体では保有量が18トン増加し、資金フローは**+80億ドル**だった。
ただし6月単月では、
世界の金ETFから89億ドル流出
しており、北米からの流出が最大だった。
したがって現在確認できるデータからは、
「8月7日の急騰=GLDを含むETFへの大規模資金流入」
と断定することはできない。
GLDの直近営業日の保有残高・前日比については、今回の公開検索では信頼できる最新値を確認できず。
→ 最新値確認できず
COMEX
WGCがCFTCデータから整理した最新の公開値では、6月末時点のCOMEX金ネットロングは538トン。
また、6月にはManaged Moneyのネットロングが増加していた。
ただし、8月7日時点の最新CFTC週次Managed Money数値は今回の検索で確認できなかった。
→ 最新値確認できず
ここは推測で埋めない。
⑤ 前日の重要材料
今回、前回からの変化として特に重要なのはこの3点。
① 米雇用市場が明確に弱くなった
7月非農業部門雇用者数は−2.3万人。
さらに過去2か月も大幅下方修正。
これによりFRBの利上げ余地が狭まり、金利市場からGOLDへ資金が向かいやすくなった。
② ホルムズ再開期待は「合意間近」から「条件付き」へ
イランはオマーンとの航路合意が最終段階としたものの、米国側の条件履行なしには海峡を再開しないと明言。
③ 原油が再び上昇
ホルムズ再開を巡る不確実性から週明け原油が上昇。
Brentは84.79ドルまで上昇した。
つまり、
雇用はGOLDに追い風
なのに、
原油はFRBにとってインフレ要因
という構図が強まった。
⑥ 現在の市場環境
昨日までとの違い
変化①
「雇用」>「FOMC」へ市場の注目が移った
8月7日の雇用統計によって、9月利上げ観測が大幅に後退。市場の金利判断が再調整された。
変化②
ホルムズ問題が再びインフレ材料になった
イラン・オマーンの合意が近づく一方、米国の条件を巡って実質再開には不確実性が残る。
そのため原油が再上昇した。
変化③
GOLDへの資金流入理由が「安全資産」だけではなくなった
8月7日のGOLD上昇は、地政学リスクだけでは説明できない。
むしろ、
雇用悪化
↓
利上げ期待低下
↓
米金利低下・ドル軟化
↓
非金利資産GOLDへの資金再配分
という金融政策経路が非常に大きい。
⑦ 今日の注目
今日から市場が見るのは8月12日の米CPI。
米労働市場は弱さを示したが、インフレはまだFRBの目標を上回っている。
NY連銀の7月調査では、1年先インフレ期待は3.6%、3年先3.3%、5年先3.0%だった。
そして8月12日には米7月CPI、8月13日にはPPIが予定されている。
したがって今週の機関マネーは、
雇用悪化による利上げ後退
だけを見るのではなく、
CPI+原油+ホルムズ
をセットで見ることになる。
ここが今週の資金フローの核心。
⑧ スマートマネー判定
🟡 中立〜ややGOLD資金優勢
現在は単純な「リスクオフ」ではない。
8月7日の市場では、
株式 ↑
債券 ↑
GOLD ↑
ドル ↓
という組み合わせが発生した。
これは恐怖による全面的な逃避というより、
「FRBがすぐに引き締める必要性が低下した」
という判断を反映した資金再配分。
ただし、ホルムズ問題による原油上昇が続けば、インフレ懸念から再び金利上昇圧力が発生する。
したがって現在のスマートマネーは、
GOLDを積極的に一本化する状態ではなく、金利低下を利用しながら地政学・インフレリスクを同時にヘッジしている状態
と判断する。
⑨ 今日の機関マネー結論
今回のGOLD上昇で最も重要なのは、
「戦争だから金が買われた」ではない。
8月7日に発生した資金移動は、
米雇用悪化
→ FRB利上げ期待後退
→ 米金利低下
→ ドル低下
→ GOLDへの資金再配分
という金融市場側の動きが中心だった。
そこへ現在、
ホルムズ再開の不確実性
→ 原油上昇
→ インフレ懸念
が重なっている。
つまり機関マネーの現在地は、
「金利低下はGOLDを支える。しかし原油高がその流れを邪魔する」
という非常に分かりやすい綱引き。
そして今週の最大材料は米CPI。
雇用統計で一度大きく動いた金利期待が、今度はインフレデータによって再評価される。
さらにホルムズ海峡については、**「外交合意があるか」ではなく「実際に船舶が安定して通航し始めるか」**が重要。
8月7日時点では通常の130〜140隻/週に対して通航が大幅に減っており、物流正常化はまだ確認できていない。
今日の機関マネー視点
「雇用悪化による金利低下」vs「原油高によるインフレ再燃」
今週はこの綱引きがGOLDへの資金配分を決める。




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