本日の市場テーマ
「強い雇用+原油高。GOLDを挟んでいた2つの資金フローが、再び“金利上昇側”へ揃い始めた」
本日の主役テーマ
先週後半のGOLD市場では、資金フローが激しく揺れた。
9月3日はFRBのWaller理事が、インフレ鈍化が続けば9月会合での据え置きを支持する可能性を示したことで、
利上げ期待後退
↓
米国債買い
↓
金利低下
↓
ドル安
↓
GOLD買い
という流れが発生した。
しかし9月4日の米雇用統計で状況が再び変化した。
8月の非農業部門雇用者数は16.2万人増。Reuters調査の市場予想5.6万人増を大きく上回り、失業率は4.1%で横ばいだった。米2年債利回りは4.37%付近へ上昇し、米10年債利回りも一時4.812%へ上昇。DXYは99.17まで上昇し、スポットGOLDは1.2%安の4,419.09ドルとなった。
さらに週末、米国とイランによる船舶・タンカーへの攻撃がエスカレート。
9月7日朝にはBrent原油が96.80ドル、WTIが92.14ドルへ上昇。ホルムズ海峡を通過する商品船は直近10日平均で1日約10隻と、5月以来最低まで落ち込んでいる。
つまり今日の市場には、
強い雇用 → FRB利上げ余地
と
原油高 → インフレ上昇リスク
という2つの材料が同じ方向から金利を押し上げる構造が生まれている。
これが今日だけの最大の特徴である。
① 東京市場
月曜東京市場が受け取った材料は、金曜NYの強い雇用統計に加え、週末にさらに悪化した中東の供給リスクである。
【市場で起きた事実】
米雇用統計上振れ
↓
FRB利上げ観測上昇
↓
米金利・ドル上昇
↓
GOLD下落
そこへ週末、
米・イランのタンカー攻撃
↓
ホルムズ海峡の物流縮小
↓
原油価格上昇
↓
新たなインフレ懸念
が加わった。
【機関投資家はどう判断したか】
先週木曜までは、
「雇用が弱ければFRBは据え置ける」
という資金フローが存在した。
しかし強い雇用統計によって、
FRBがインフレ対策を優先できる余地が再び大きくなった。
【資金はどこへ動いたか】
金曜NYでは、
GOLD → ドル・高金利環境
への短期資金シフトが確認された。
東京市場ではそこに原油高によるインフレ・プレミアムが上乗せされている。
② 欧州市場
欧州市場で重要なのは、原油高が単なる地政学ニュースではなく、
中央銀行の政策判断に直結するインフレ材料
になっていること。
Brent原油は先週1週間で7.8%上昇、WTIは約10%上昇。
さらに9月7日朝も上昇が続き、Brent96.80ドル、WTI92.14ドルとなった。
OPEC+は9月6日の会合で、10月の生産政策を維持した。つまり週末時点では、中東からの供給障害を相殺する新たな増産措置は示されていない。
【市場で起きた事実】
供給障害
↓
原油高
↓
物価圧力
↓
中央銀行の引き締め期待
欧州株も先週はインフレ懸念を背景に週間下落。市場ではECBについても追加利上げ観測が意識されている。
【機関投資家の判断】
これは米国だけの金利問題ではない。
「世界的に金利を高く維持する必要があるのではないか」
という資産配分の再評価である。
GOLDにとっては、地政学的な安全資産需要と、高金利による保有コスト上昇が正面から衝突する。
③ NY市場
最新のNY市場、9月4日の主役は完全に米雇用統計だった。
8月非農業部門雇用者数は、
+16.2万人
市場予想は+5.6万人。
さらに6月・7月分は合計5.5万人上方修正された。失業率は4.1%で横ばいだった。
データ発表直後、市場が織り込む9月FOMCでの利上げ確率は、
約55% → 約65%
まで上昇。
NY午後には約57%まで戻したものの、Waller発言直後の「据え置き寄り」の資金配分は明確に後退した。
米10年債利回りは一時4.812%まで上昇し、終盤は約4.78%。
米財務省の9月4日公式終値でも**4.78%**だった。
DXYは0.21%上昇して99.17。
スポットGOLDは1.2%下落して4,419.09ドル。一時は4,364.99ドルまで2%超下落した。
資金フロー
強い雇用
↓
FRB利上げ余地拡大
↓
短期金利上昇
↓
ドル買い
↓
GOLD売り
NY市場では、木曜に発生したGOLDへの資金回帰が1日で巻き戻された。
なお9月7日は米国のLabor Dayで、米国市場は休場となるため、通常のNY現物市場からの価格形成は限定される。
④ ETF・GLD・COMEX
■ 世界の金ETF
World Gold Councilが現在公表している最新月次確定データは2026年7月分。
7月は世界の金ETFへ、
- 純流入:30億ドル
- 保有量:+23トン
- 総保有量:4,068トン
- AUM:5,300億ドル
- 年初来資金流入:110億ドル
となった。
地域別では欧州が7月の流入を主導。アジアも年初来では最大の資金流入地域で、北米は年初来では純流出圏にある。
中期ETF資金は、GOLDを完全に放棄していない。
■ GLD
SPDR Gold SharesのState Street公式ページ、およびWorld Gold CouncilのETFデータを追加確認した。
ただし今回取得できた公開情報からは、9月4日営業日終了時点のGLD金保有量(トン)と前営業日比を確実に照合できる値を確認できなかった。
したがって推測は行わない。
GLD保有残高:最新値確認できず
前営業日比:最新値確認できず
World Gold Councilの最新月次ETFデータは7月確定値までである。
■ COMEX・CFTC
ここは先週から重要な変化が出た。
最新CFTCのDisaggregated COTは、
9月1日時点
COMEX GOLD Futures Onlyで、
- Open Interest:415,196枚
- Managed Money Long:149,721枚
- Managed Money Short:12,950枚
- Managed Money Net Long:136,771枚
となった。
前週8月25日比では、
- Open Interest:−12,761枚
- Managed Money Long:−10,098枚
- Managed Money Short:−2,122枚
- Net Long:約**−7,976枚**
となる。
これは重要。
投機筋は依然大幅なネットロングだが、ロングを一部縮小し始めた。
つまり、
「中期的にGOLDを完全撤退」ではないが、短期マクロ資金はポジションを軽くしている
という状態である。
■ 中央銀行
9月3日にWorld Gold Councilが公表した最新中央銀行データでは、7月の中央銀行による金購入はネット23トン。
特に、
- 中国:+20トン
- ポーランド:+8トン
が主要買い手。
中国人民銀行の金購入は21カ月連続となった。
一方、ロシアは6トンを売却。
2026年年初来の報告ベース中央銀行買い越しは約130トンとなっている。
短期投機資金は縮小しているが、中央銀行の構造的なGOLD需要は継続している。
⑤ 前日の重要材料
① 米雇用が市場予想を大幅に上回った
非農業部門雇用者数は+16.2万人。
予想+5.6万人。
金曜の最大材料だった。
② 利上げ確率が再上昇
雇用統計直後は9月利上げ確率が約65%へ。
木曜のWaller発言で後退した利上げ期待が再び戻った。
③ 実質金利も高水準
FREDの10年実質金利は、9月4日週平均で2.44%。
前週の2.36%から上昇している。
GOLDにとっては、名目金利だけでなく実質的な保有機会コストも高い状態にある。
④ 原油高が週末にさらに悪化
今朝のBrentは96.80ドル、WTI92.14ドル。
米国とイランによるタンカー・船舶攻撃が、単なる軍事衝突からエネルギー物流そのものへの攻撃へ広がっている。
⑤ 資金は「現金」にも逃げている
9月2日までの1週間で、世界のマネーマーケットファンドには461億ドルの純流入。
約1カ月で最大の流入となった。
一方、米国株ファンドからは111.2億ドルが流出した。金・貴金属ファンドには資金流入が続いた。
これは、
リスクを取りながらGOLDだけ買う市場ではなく、流動性そのものを求める機関資金も増えている
ことを示している。
⑥ 現在の市場環境
🔴 短期GOLDを圧迫する資金
- 米雇用統計の大幅上振れ
- FRB利上げ確率再上昇
- 米10年債利回り約4.78%
- 10年実質金利2.44%
- DXY 99.17
- Brent約97ドル
- インフレ再加速リスク
➡ ドル・金利側が再び優位
🟡 中期GOLDを支える資金
- 世界金ETFは7月に30億ドル純流入
- 中央銀行は7月に23トン純購入
- 中国は20トン購入
- COMEX Managed Moneyはなお13.7万枚規模のネットロング
- 中東の地政学的不確実性はさらに上昇
➡ 構造的な金需要は残っている
現在の市場構造
短期:金利・ドルがGOLDを圧迫
VS
中期:ETF・中央銀行・地政学リスクがGOLDを支える
ただし先週までとの最大の違いは、
短期投機筋のロング縮小がCFTCデータにも現れ始めた
ことである。
⑦ 今日の注目
■ ① 原油・ホルムズ海峡
今日最大のリアルタイム材料。
ホルムズ海峡の船舶通行量は直近10日平均で1日約10隻と5月以来最低。
Brentは96.80ドルまで上昇している。
ここから市場が見るのは、
戦闘そのもの
ではなく、
実際のエネルギー供給量とインフレへの波及
である。
■ ② 今週の米CPI・PPI
Reutersによると、今週は米PPIとCPIが予定されている。
市場予想ではコアCPIは前年比**2.4%**と、7月の2.5%からやや鈍化が見込まれている。
強い雇用統計によって、
FRBの判断は「雇用」から再び「インフレ」へ移った。
■ ③ FRBの9月会合
9月15〜16日のFOMC。
雇用統計直後には利上げ確率が65%まで上昇したが、NY午後には57%へ低下した。
つまり市場は、
利上げを確定事項とは見ていない。
次のCPIが極めて重要になる。
■ ④ 米10年債・実質金利
名目10年債:4.78%
10年実質金利:2.44%
GOLD市場にとって現在もっとも重要なのは、地政学ニュースだけではなく、
金利を差し引いた後でもGOLDを持つ資金が増えるのか
という点である。
⑧ スマートマネー判定
🟠 判定:短期「GOLDロング縮小」、中期「戦略保有継続」
【短期資金】
金曜の流れは、
強い雇用
↓
FRB利上げ観測
↓
金利上昇
↓
ドル高
↓
GOLD売り
さらに月曜朝は、
ホルムズ情勢悪化
↓
原油高
↓
インフレ懸念
が加わった。
CFTCでもManaged Moneyのネットロングは前週から約8,000枚縮小している。
判定
短期スマートマネーはGOLDへのリスクを落とし始めている。
【中期資金】
一方、
- 世界ETF:7月30億ドル純流入
- 中央銀行:7月23トン純購入
- 中国:20トン購入
- COMEX Managed Money:なお13.7万枚のネットロング
という構造が残る。
したがって、
「機関投資家がGOLDを捨てた」と判断できるデータではない。
⑨ 今日の機関マネー結論
今日のGOLD市場では、「戦争だからGOLD」だけでは不十分。
先週金曜、
強い米雇用
↓
FRB利上げ観測再上昇
↓
米金利上昇
↓
ドル高
↓
GOLD売り
が発生した。
そして週末、
米・イラン攻撃拡大
↓
ホルムズ物流縮小
↓
Brent約97ドル
↓
インフレ懸念再上昇
が加わった。
つまり今朝の機関投資家は、
「地政学リスクでGOLDを買うか」
より、
「原油高でFRBがさらにタカ派化するか」
を見ている。
一方で、ETFと中央銀行の資金を見ると、中期的なGOLD需要は残っている。
さらにCFTCでは、
Managed Moneyのロングが縮小し始めた
という新しい変化も確認された。
したがって現在の市場は、
短期:GOLDから金利・ドルへ
中期:GOLDの戦略保有は維持
という時間軸の違う資金が衝突している。
そして今日最大の焦点は、
「ホルムズ海峡 → 原油 → インフレ → FRB」
この資金フローである。
米国市場がLabor Dayで休場となる中、次に機関マネーの方向を大きく決めるのは今週の米PPI・CPIになる。




0 件のコメント:
コメントを投稿